
「決算短信って難しそう…」
「どこを見ればいいのかわからない」

こんにちはぱぱハムです。
8月を前に、各社の決算発表が本格化してきますね。
配当株投資をはじめた頃、私は決算短信の読み方がわからない投資家でした。
しかし、決算短信は配当株投資を続けていくには欠かせない情報源です。
今では、保有株の決算短信を毎期欠かさず読んでいます。
この記事では、配当狙いの投資家ぱぱハムが実際に決算短信を読み解く際に、どのようなポイントに注目し、何をチェックしているかを具体的に解説します。
決算短信で配当株投資のヒントを見つける
決算短信は、企業の現在の状況と将来性を知るための貴重な情報源です。
配当狙いの投資では、増配の可能性や財務の安定性、現在の割安度を見極めるために、特定のポイントに注目していきます。
予想の上振れを見極める
企業の業績予想が上方修正されると、増配につながる可能性が高いです。
そんな上方修正の有無を予想できたらいいですよね。
通期業績予想に対する進捗率を前期と比較することで、上方修正の可能性を探ることができます。
通期業績予想に対する進捗率を算出する
各四半期ごとの決算短信を見れば、通期業績予想に対する進捗率が算出できます。
計算式
通期予想に対する進捗率=当該期間までの蓄積純利益÷通期予想純利益×100
基本的には、各四半期で25%ずつ進捗するのが理想です。
しかし、進捗率の推移は業界や企業によって独自の傾向があります。
例えば、下半期に業績が偏重する企業の場合、上半期の進捗率が40%以下になることもあります。
そのため、前年同期比での確認がおすすめです。
過去の情報は、各企業サイトのIR情報で確認できます。
EPS成長から考える増配の期待度
EPSは配当の原資です。
EPSが毎年成長している企業は、稼ぐ利益が毎年増えているので増配が期待できます。
例えば、配当性向30%を宣言している企業は、EPSが100から120に伸びた場合、年間配当を30円から36円に増配することになります。
計算式
年間配当金=EPS×配当性向
EPS100円の場合 30円=100×30%
EPS120円の場合 36円=120×30%
EPSが毎年成長している企業は、増配の期待が高くなって当然です。
BPS増加で減配リスクを判断する
BPSは1株当たり純資産のことです。
計算式
BPS=純資産÷発行済み株式数
BPSが増えるほど、企業の財務基盤が安定するので、減配リスクが低下します。
BPSの増加を見る際は、配当支払いなどが原因で、一時的に純資産が減少するタイミングがあることに注意してください。
例えば、前期末の配当は、今期第1四半期中に支払われます。
しかし、第1四半期に上乗せされる純資産は第1四半期分で稼いだ利益だけです。
結果として、前期末より今期第1四半期末の純資産のほうが少なくなることがあります。
右肩上がりではなく、1年間で上下しながら上昇していくのはBPSの自然な動きです。
前年同期と比べることで、一時的な変動に惑わされず、BPSの増加を把握しやすくなります。
前年同期など過去の指標を確かめる際には、信頼できる情報源を見ることが大事です。
信頼できる情報源の例には企業サイトのIR情報やIR BANKなどがあります。

増配の可能性を探る
「増配があったか」
「期末までに増配がありそうか」
これは、配当狙いの投資において最も重要なチェックポイントです。
以下の3つの観点から増配の可能性を探ります。
・配当政策
・配当性向
・DOE(株主資本配当率)
配当政策が変わりやすいタイミング
企業は、どのような方針で株主還元を行うかを定めた配当政策を企業サイトの投資家情報や適時開示、中期経営計画などで公開しています。
この配当政策に変更があるタイミングは、多くの場合決算発表か中長期経営計画発表のタイミングと同時です。
政策変更に合わせて増配が発表されるケースが多いため、決算発表や中長期経営計画発表の時期を注視します。
配当性向から増配余力を見極める
配当性向を見ると、その企業の増配余力がわかります。
計算式
配当性向=1株当たり配当金÷EPS×100
仮に企業のEPSが毎年横ばいだと仮定した場合、増配余力は「100%− 配当性向」と考えることができます。
配当性向が低い企業ほど、利益の活用範囲が広く、将来的な増配の可能性が高いです。
逆に、配当性向が高い企業は、EPSが成長しない限り増配に期待できません。
配当予想に対するDOEで増配の可能性を探る
配当政策にDOEを採用している企業の場合、配当予想に対するDOEを計算すると増配の可能性を探ることができます。
計算式
DOE=配当金総額÷(※自己資本もしくは株主資本)×100
※自己資本と株主資本は似ているが厳密には違いがあり、企業によってDOEの定義が違う場合がある
配当予想に対するDOEを調べる際には、計算式の自己資本の部分を自己資本の通期予想額に置き換える必要があります。
計算式
通期予想自己資本=前期末自己資本+通期予想純利益−年間予想配当額
厳密には、自社株買いや有価証券の時価変動など、純利益と配当以外の自己資本変動要因を含める必要があるのですが、ここでは上記の簡易的な計算式で概算して大丈夫です。
配当予想に対するDOEが、企業の目指すDOEの数値より低い場合、期末の増配が期待できます。
割安度から買い付けタイミングを判断する
企業の割安度がわかれば、買い付けや買い増しの適切なタイミングを見極めることができます。
とはいえ、割安とはどのような状態なのでしょうか?
・ネットキャッシュ比率
・キャッシュニュートラルPER
清原達郎氏が推奨する、2つの指標を活用することで、企業の割安度がわかります。
ネットキャッシュ比率で企業の資産価値を評価する
ネットキャッシュ比率は、企業の現預金や換金性の高い資産から負債を差し引いたネットキャッシュを時価総額で割って算出します。
計算式
ネットキャッシュ比率=ネットキャッシュ÷時価総額
ネットキャッシュ=流動資産+(投資有価証券×70%)−負債
時価総額=株価×発行済み株式数
ネットキャッシュ比率が0から1に近づくほど企業は割安と判断できます。
1を超える企業はもはや激安と言える状態です。
キャッシュニュートラルPERで純粋な投資回収目安を測る
キャッシュニュートラルPERは、企業の資産価値を差し引いたPERです。
計算式
キャッシュニュートラルPER=PER×(1−ネットキャッシュ比率)
PER=株価÷EPS
この指標を見れば、企業が持つ現金などを考慮に入れた上で、より実態に近い純粋な投資回収の目安を測ることができます。
保有銘柄の割安度をチェック!ネットキャッシュ比率・キャッシュニュートラルPER
決算短信の構造と注目ポイントを解説
決算短信は、大きく分けてサマリー情報と添付資料で構成されています。
小松ウオール工業(7949)の2026年3月期第1四半期決算短信を例に、配当投資で注目するべきポイントを解説します。
サマリー情報で主要な業績を把握する
決算短信の中でも特に重要な情報が集約されているのがサマリー情報です。
今回の例、小松ウオール工業の資料には
1.第1四半期の業績
2.配当の状況
3.2026年3月期の業績予想
※注記事項
という4つの情報が記載されています。
ひとつずつチェックしていきましょう。
業績項目で企業の成長性を確認する
第1四半期の業績には、経営成績と財務状態が記載されています。
経営成績

- 売上高
- 営業利益
- 経常利益
- 四半期純利益
- 1株当たり四半期純利益(EPS)
財務状態

- 総資産
- 純資産
- 自己資本比率
特に注目すべきは、四半期純利益、1株当たり四半期純利益(EPS)、純資産です。
四半期純利益
四半期純利益は、通期予想に対する進捗率の計算に使います。
計算式
通期予想に対する進捗率=四半期純利益÷通期予想純利益×100
小松ウオール工業の例
・通期予想に対する進捗率7.37%=2.16億円÷29.3億円×100
1株当たり四半期純利益(EPS)
枠内に記載してある前年同期の数値と比較して、成長しているか確認します。
小松ウオール工業の例
・前年同期EPS1.57億円
・今期EPS2.16億円
純資産
純資産は、BPSやDOEの計算に使用します。
厳密には、純資産と自己資本が異なる概念ということは頭に入れておいてください。
決算短信の記載では自己資本が枠外に記載されているので参考にできます。
通期予想自己資本を算出すれば、通期予想DOEもわかります。
計算式
BPS=純資産÷発行済み株式数
DOE=年間配当予想額÷自己資本×100
通期予想DOE=年間配当予想額÷通期予想自己資本×100
通期予想自己資本=前期末自己資本+通期予想純利益-年間予想配当額
年間予想配当額=年間配当金×発行済み株式数
小松ウォール工業の例
BPS1894.69=373.67億円÷1972.2万株
DOE6.86%=25.64億円÷373.67億円×100
通期予想DOE6.72%=25.64億円÷381.56億円×100
通期予想自己資本381.56億円=377.9億円+29.3億円-25.64億円
年間予想配当額25.64億円=130円×1972.2万株
配当の状況で配当金の自分がもらえる年間配当金を把握する
「配当の状況」には、四半期ごとおよび年間の配当金に関する情報が記載されています。
第2四半期末と期末に配当を設定している企業が多いです。
枠下には、前回予想からの修正の有無や株式分割の詳細なども記載されているのでしっかり確認します。
年間配当金

- 第1四半期末
- 第2四半期末
- 第3四半期末
- 期末
- 合計
「合計」として記載されている年間配当金は、1株保有している場合に受け取れる年間の配当金額です。
自身が保有している株数に応じた年間配当金や、配当性向、企業全体の年間予想配当額を計算する際にこの数値を使用します。
計算式
自身の年間配当金=年間配当金×保有株数
配当性向=1株当たり配当金÷EPS×100
年間予想配当額=年間配当金×発行済み株式数
小松ウオール工業の例
・100株保有の年間配当13,000円=130円×100株
・配当性向80.8%=130円÷160.97×100
・年間予想配当額25.64億円=130円×1972.2万株
業績予想で将来の動向を見通す
「業績予想」には、通期の業績予想が記載されています。

- 売上高
- 営業利益
- 経常利益
- 当期純利益
- 1株あたり当期純利益(EPS)
ここでチェックするのは当期純利益とEPSです。
当期純利益
前回予想からの修正の有無を確認します。
先ほど紹介した、予想に対する進捗率の確認に使用するのはこの数値です。
計算式
通期予想に対する進捗率=四半期純利益÷当期純利益×100
小松ウオール工業の例
・通期予想に対する進捗率7.37%=216億円÷2,930億円×100
1株当たり当期純利益(EPS)
前回予想からの修正の有無を確認します。
企業サイトなどから前期の決算短信を確認して、前期からの成長を確認します。
小松ウォール工業の例
・前回予想からの上振れ無し
・前期EPS145.64円→今期通期予想EPS160.97円
注記事項から発行済み株式数を確認する
注記事項には3つの項目がありますが、「(3)発行株式数」のみチェックします。

- 期末発行済み株式数(自己株式を含む)
- 期末自己株式
- 期中平均株式数(四半期累計)
期末発行済み株式数を確認して、BPSと時価総額の計算に使用します。
計算式
BPS=純資産÷期末発行済み株式数
時価総額=株価×発行済み株式数
小松ウォール工業の例
・BPS1,894.69=373.67億円÷1972.2万株
・時価総額499億円=2,528円×1972.2万株
※株価は2025年7月25日終値2,528円
添付資料で詳細な財務状況を把握する
添付資料には、経営や財務状況の概況、業績予測など、さらに詳細な情報が含まれています。
その中でも、特に急いで確認するべき項目は四半期貸借対照表です。
四半期財務諸表及び主な注記

- 四半期貸借対照表
- 四半期損益計算書
- 四半期財務諸表に関する注記事項
貸借対照表からネットキャッシュを算出する
ネットキャッシュの算出に必要となる項目は以下の3つ
・流動資産
・投資その他の資産(その他)
・負債合計
これらの情報は四半期貸借対照表に記載されています。

企業の割安度を測る指標、ネットキャッシュ比率とキャッシュニュートラルPERは、ネットキャッシュを使って計算できます。
計算式
ネットキャッシュ=流動資産+(投資有価証券×70%)−負債
ネットキャッシュ比率=ネットキャッシュ÷時価総額
PER=株価÷EPS
キャッシュニュートラルPER=PER×(1−ネットキャッシュ比率)
小松ウォール工業の例
・ネットキャッシュ211億円=279億円+(26億円×70%)-86億円
・ネットキャッシュ比率0.42=211億円÷499億円
・PER15.7=2,528円÷160.97
・キャッシュニュートラルPER9.1=15.7×(1-0.42)
決算短信の信頼できる情報源と開示義務
信頼できる情報源
決算短信の数値を確認する際には、信頼できる情報源から情報を得ることが重要になります。
まず間違いないのが企業サイトのIR情報です。
小松ウオール工業/投資家情報IRライブラリ
東証からの決算内容の開示義務
上場会社は、決算内容が定まった場合、その内容を開示することが義務付けられています。
これは「45日ルール」と呼ばれ、本決算期末後45日以内での開示が望ましいとされているものです。
日本取引所グループのウェブサイトに決算短信作成要領が掲載されているので、詳細を確認できます。
日本取引所グループ/決算短信作成要領・四半期決算短信作成要領
まとめ
決算短信は、配当狙いの投資家にとって貴重な情報源です。
企業の業績予想の上振れ、EPSやBPSの成長などをチェックすることで、将来性のある配当株を見つけられます。
特にサマリー情報を重点的にチェックしてください。
さらに、添付資料の貸借対照表からネットキャッシュを計算することで、より正確な投資判断が可能になります。
最後に小松ウオール工業の決算短信でチェックした情報をまとめます。
- 通期予想に対する進捗率 7.37%
- 前年1Q EPS 1.57億円
- 今期1Q EPS 2.16億円
- BPS 1894.66
- DOE 6.86%
- 通期予想DOE 6.72%
- 通期予想自己資本 381.56億円
- 年間予想配当額 25.64億円
- 100株保有の年間配当 13,000円
- 配当性向80.8%
- 前回予想からの通期業績上振れ 無し
- 前期通期EPS 145.64円→今期通期予想EPS 160.97円
- 時価総額 499億円
- ネットキャッシュ 211億円
- ネットキャッシュ比率 0.42
- PER 15.7倍
- キャッシュニュートラルPER 9.1倍